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東洋医学の心 |
心
心は五臓中最も重要な臓器とされている。
血液運行の中心であり、また先天の陽気が宿る。心は「血を主り、脈をつかさどる」だけでなく、人間の意識活動=精神活動(神)を統括する。
「心は神を蔵す」「心は生の本、神の変ずるところなり」。(『素問』)
ここで言う「神(しん)」とは、単に意識や知能ではなく、「生きている力」「魂の光」「感情・思考・直観」のすべてを統括する、東洋医学特有の概念である。
心は五臓の中心であり、他の臓腑が正しく働くための調律者ともいえる。「心が衰えるとすべての臓器にも影響する」(『素問』)とあるように、心の不調は全身に波及する。
心の病の症状には、動悸、恐怖、不眠、胸苦しさ、多汗、赤舌、集中力の低下、妄想、さらには「空虚感」などが含まれる。
■心包:心の盾
心を外界の刺激や感情的衝撃から守る「心包」は、ちょうど現代人が無意識に形成する“心理的バリア”に似ている。心包がうまく働かないと、ちょっとした出来事にも過剰に反応し、心がすぐに消耗してしまう。これはSNS疲れや共感疲労に通じる現代的問題である。
■現代社会と心の神(しん)の乱れ
情報過多、時間に追われる生活、常に他者と比較される社会…。こうした現代の環境は「神」を乱しやすい。心が本来持っている静かな輝き=“神明”は、外界の騒がしさによりかき消されてしまうことがある。東洋医学における心の調整とは、そうした騒がしさの中でも、自分の中に静けさを保つ術でもある。
■整身・整息と心の安定
呼吸が浅く、落ち着かない状態は「神の乱れ」を招く。逆に静かな呼吸、ゆったりした身体の状態は、「神明を明らかにする」ことに通じる。つまり整身・整息こそが心を整える道なのである。東洋医学の“心”とは、頭で考えることではなく、“身体と共にある精神”なのだ。

心の病証
●心気虚(しんききょ) … 疲れやすい、動悸、集中力低下、息切れなど
●心陽虚(しんようきょ) … 冷え、顔色が白く無表情、むくみ、無力感など
●心陰虚(しんいんきょ) … 不眠、動悸、焦燥感、舌の先が赤いなど
●心血虚(しんけつきょ) … 不安、夢が多い、記憶力低下、顔色の艶がない
●心火上炎(しんかじょうえん) … イライラ、口内炎、不眠、舌尖紅など
●心血瘀阻(しんけつおそ) … 胸痛、舌に瘀点(おてん)、夜間の胸苦しさ
■心の声を聴く
心の神は、静けさの中でしか語りかけてこない。外に答えを求める時代が終わり、自らの心に耳を傾けるときが来ている。東洋医学の「心」とは、単なる臓器ではなく、**生きる姿勢そのもの**を映し出す鏡でもある。
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