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東洋医学の肝 |
肝
肝は魂を蔵し、判断力や計画性、感情の伸びやかさを支える精神活動の中心である。古くから「肝は罷極の本(ひきょくのほん)」とされ、休息や回復と深く関係し、「将軍の官」として全身の気血の運行を指揮する役割を持つ。
●肝は血を蔵す。肝は血液の貯蔵庫となり、身体各部の血液量を活動状況に応じて調整する。特に夜間の睡眠時に血を集め、魂(魂魄)の安定を助けるとされる。
●肝は筋を主る。筋肉の柔軟性や反応性は肝の状態に大きく影響される。肝血が不足すると足がつりやすくなったり、動作がぎこちなくなることがある。
●肝の状態は爪に反映する。爪の色や硬さ、割れやすさは肝血の充実度を表す。
●肝は目に開窮(かいきゅう)する。目の疲れ、視力低下、乾燥感などは肝血不足や肝の失調と関連づけられる。
●肝の液は涙である。ストレスによる涙、目の乾きなども肝の働きと密接に関わっている。
●肝気がよければ、精神も安定し、感情の葛藤も少なく、胆汁の分泌もスムーズで、脾胃の消化を助ける。
■現代との接点
現代社会においては、肝の「疏泄(そせつ)」機能、すなわち感情の流れを円滑に保つ作用が特に重要である。仕事のプレッシャー、人間関係、SNSの情報過多などによって「肝気鬱結(かんきうっけつ)」が起こりやすく、これが慢性的な肩こりやPMS、怒りやすさなどとして現れる。
■魂との深いつながり
肝に宿る「魂(こん)」は、西洋的な“精神”や“意識”とは異なり、「夜に夢を見る力」や「未来を構想する力」、「変化に柔軟に対応する力」としても機能する。ゆえに肝を整えるとは、自分自身の未来を信じて前に進む力を整えることでもある。
■整身・整息との実践的つながり
肝は「動」に属し、呼吸法や身体の調整によってその働きを助けることができる。静かな腹式呼吸により肝気が和らぎ、上昇しがちな肝火を静め、心を鎮める効果がある。整身・整息の習慣は、肝を守る実践そのものである。

肝の病証
●肝気の鬱滞 … 情緒の抑圧、胸脇部の張り、ため息、PMSなど
●肝火の亢進 … 怒りっぽさ、顔面紅潮、頭痛、目の充血など
●肝陰虚 … 目の乾燥、不眠、夢が多い、焦燥感など
●肝陽の亢進 … のぼせ、めまい、耳鳴り、手足のしびれなど
●肝血虚 … 爪が割れやすい、筋のけいれん、目のかすみなど
●肝風 … 手足の震え、痙攣、意識障害など(急性症状に注意)
■肝の不調を自覚するヒント
自分の中に「イライラ」「予定通りにいかない焦り」「急に涙が出る」「言葉にできない不安」があるとき、まず肝の疲れを疑うことができる。それは「あなたの魂が、自然のリズムとずれてきているサイン」かもしれない。

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