うつとの鑑別が必要な疾患

英語
Diseases that need to be differentiated from depression
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うつとの鑑別が必要な疾患
うつ病とよく似た症状を示す疾患は数多く存在します。正確な鑑別を行うことは、適切な治療や支援につながるだけでなく、「自分を責める誤解」から人を救う第一歩となります。以下は、うつ病との鑑別が必要とされる代表的な疾患とその特徴です。
- 不安神経症(全般性不安障害)
根拠のない不安や心配が長期間続き、集中力の低下や睡眠障害を伴うことがあります。気分の落ち込みがあっても、うつ病とは異なり「気分の波」が比較的保たれています。 - ヒステリー神経症(解離性障害・転換性障害)
感情の抑圧が体の症状として現れ、記憶喪失や手足の麻痺などが見られることがあります。本人に病識がない場合もあり、うつ病との鑑別が重要です。 - 強迫神経症(強迫性障害)
自分でも不合理とわかっていながら、繰り返し確認や行為をせずにはいられない状態です。抑うつ症状を伴うこともあり、混同されやすいですが、主訴が異なります。 - 恐怖神経症(社会不安障害・パニック障害など)
特定の状況や対象に対する強い恐怖と回避行動が特徴。特にパニック障害では発作のあとに抑うつ状態になることもあり、うつとの見極めが不可欠です。 - 心気神経症(病気不安症)
病気にかかっているのではという強い不安に支配される状態です。うつ病と同様に疲労感や意欲低下を訴えるため誤診されることがあります。 - 抑うつ神経症(気分変調症)
慢性的に気分が沈むが、うつ病ほどの重症度ではない。人との関係や日常生活への不満が中心で、環境の変化で改善することもあります。 - 境界性パーソナリティ障害
感情の不安定さ、対人関係の極端さ、自傷行為などが特徴。抑うつ気分はあっても、うつ病とは異なる「怒りや空虚感」が目立ちます。 - 統合失調症(旧:精神分裂病)
幻聴や妄想、思考のまとまりのなさが特徴。初期には意欲低下や社会的引きこもりが見られ、うつ病と誤認されることがあります。 - 認知症(老年痴呆)
物忘れや判断力の低下のほか、抑うつに似た無気力や食欲不振が起きることもあります。うつ病との鑑別が重要で、間違うと対応が逆効果になります。 - 心身症
ストレスが原因で身体に症状が現れる病態。胃潰瘍、過敏性腸症候群など多岐にわたり、精神的な落ち込みも見られることがあります。 - パーキンソン病
運動障害だけでなく、うつ様症状(意欲低下、表情の乏しさなど)を伴うことが多く、気づかれにくい側面があります。 - 気質性脳疾患(脳腫瘍、脳血管障害など)
中枢神経の障害によって性格変化やうつ様症状が出ることがあります。身体的な精査が必要です。
これらの疾患は、症状だけを見ると「うつ病」に非常によく似ているため、医療現場でも誤診が起こりやすい分野です。大切なのは、「症状」ではなく「人」を見ること。表に現れた言動の裏にある「生きづらさの構造」や「背景」を読み取る姿勢こそが、真の鑑別につながります。
備考
上記の疾患以外にもうつを引き起こす場合がある疾患は多数あります。

参考文献
うつ病治療ガイドライン 日本うつ病学会監修
医学書院 東京 2017
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関連外部リンク
Depression and associated physical diseases and symptoms
National Library of Medicine
Mental disorders
WHO
Mood Disorders
The Johns Hopkins University
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