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経絡・経穴(ツボ)

経渠(けいきょ)

英語
Lung(LU)8
Jing Qu(Channel Ditch)

経渠(けいきょ)(経金穴)

手の太陰肺経8
The Lung Meridians of Hand Taiyin

経渠
けいきょ
keikyo

取穴部位
前腕の前橈側で太淵穴の上1寸、橈骨動脈の拍動部に位置し、皮膚表面からでも脈の鼓動が触れやすい部位。
まるで“気の流れ”が川筋を成して鼓動しているように感じられることから、鍼灸家にとって“流れを見る場所”とも言える。

筋肉
腕橈骨筋腱

運動神経
橈骨神経

知覚神経
外側前腕皮神経

血管
橈骨動脈

手の太陰肺経

主治
・咳嗽、喉の乾燥感、胸の重苦しさなど、肺の表層的な症状に有効
・手首や親指の痺れや違和感、腱鞘炎の初期症状にも適応
・情緒の不安定さ、呼吸の浅さから来る焦燥感や神経過敏
・皮膚に現れる乾燥やアレルギー症状(肺は皮膚を司るとされるため)

名前の由来(オリジナル解釈)
「経」は“経脈”=気血の通り道、「渠」は“人工的に整えられた水の通路”を意味する。
すなわち「経渠」とは、“整えられた経の流路”であり、混乱した気の流れを人為的に調整し、
本来あるべき流れへと導く場所とされる。ここは肺経における“気の流れの制御装置”とも言える要所である。

経金穴としての役割
肺は五行で「金」に属し、経渠は肺経の「経金穴」である。
金は“収斂(しゅうれん)”の性質を持ち、過剰に発散してしまうエネルギーを内側へと戻す働きを担う。
つまり、気の拡散・漏れ・不安定さを抑え、落ち着かせることに特化した“収束点”。

臨床応用(独自視点)
・不安による過呼吸や呼吸浅深のコントロールがうまくいかない患者に有効。
・過剰な感情反応(イライラ・怒り・涙が止まらない等)が「呼吸」として表出しているケースで、
 このツボは“自律神経の蛇口”のように働くことがある。
・手首に溜まりやすい余分な「気の吹き出し口」としても扱われ、
 鍼やお灸を用いて“気の暴走を鎮める”操作ができる。

感情・意識との関係
・肺は“悲”を司る臓であり、経渠は「悲しみの出口」に近い場所にある。
・言葉にできない悲しみが呼吸の不安定さとして現れる場合、経渠を通して静かな受容が始まる。
・このツボに軽く触れるだけで涙が出ることがある患者もおり、
 心と身体が“悲しみに気づき、抱きしめる準備”を整えるスイッチとなる。

養生のヒント
・風が強い日や乾燥した季節に、経渠を温めることで皮膚と呼吸が守られる感覚が生まれる。
・スマホの使いすぎによる手首の緊張が呼吸に波及しているときにも、経渠は良いケアポイント。

補足
・経渠は肺の力が“外に漏れ出している”ような症状に対して、“内に取り戻す”働きがある。
・エネルギーを「凝縮し、守る」方向への操作ができる数少ない穴の一つであり、
 特に虚弱体質や気虚タイプの人にとっては“肺の扉を内側から閉じる鍵”となる。

→太淵(たいえん)

←列缺(れっけつ)

→手の陽明大腸経

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