
気虚(ききょ)
英語
Qi Deficiency
Qi Vacuity
症状: 全身的な倦怠感、体内の「気」が不足している状態。
治療法: 体内の「気」を補う。
気虚(ききょ)の特徴と鍼灸治療まで詳しく解説。
もくじ
執筆者
気虚(ききょ)とは
気虚(ききょ) は、東洋医学の概念で、体内の「気」が不足している状態を指します。
「気」は生命力やエネルギーとして考えられ、体を動かす原動力、臓器の働き、免疫力、精神的な活力などに関わる重要な要素とされています。
気虚の状態になると、体や心の様々な機能に支障をきたすことがあります。

気虚の症状
全身的な倦怠感
気虚があると、体全体がだるく感じ、疲れやすくなります。何もしていなくても、力が入らず、活力が失われる感覚を持つことが多いです。息切れや呼吸の浅さ
気が不足すると、特に体を動かしたときに息切れがしやすくなり、呼吸が浅く感じられます。汗をかきやすい
気虚の人は、体温の調整がうまくいかず、少しの運動や緊張でも汗をかきやすくなることがあります。食欲不振や消化不良
気は消化にも関わるため、気虚の状態では食欲が減少したり、食べ物を消化する力が弱くなったりします。消化不良や腹部の膨満感を感じることもあります。精神的な落ち込みや無気力
気は精神面にも影響を与えます。気虚が進行すると、精神的に元気がなくなり、無気力感や焦燥感、うつ症状が現れることがあります。顔色の悪さや体力低下
気虚の人は顔色が青白く、元気がない印象を与えることがあります。また、体力が低下し、以前と同じ活動量でも疲れやすく感じることが多いです。気虚の原因
過労やストレス
長期間の過度な労働や精神的なストレスが気虚を引き起こすことがあります。身体が疲れ果て、気のエネルギーが消耗していきます。不規則な生活や栄養不足
食生活が偏っていたり、栄養が足りないと、体の気の生成が不足することがあります。慢性的な病気
長期的な病気や慢性的な症状がある場合、体力が消耗し、気虚の症状が現れやすくなります。加齢
年齢を重ねることによって、自然と体の気が不足しがちになります。気虚の病気
慢性疲労症候群
常に疲れている睡眠をとっても回復しない
活動量が減る
消化器系の虚弱(脾気虚)
食欲不振下痢・軟便
お腹が張りやすい
食後に眠くなる
肺気虚(呼吸器系の虚弱)
息切れ咳が長引く
風邪をひきやすい
声に力がない
気虚による不妊や月経不順
月経の量が少ない月経が遅れる
倦怠感を伴う
心気虚(心の気が不足)
動悸不安感
集中力低下
不眠
免疫力低下
風邪を繰り返す回復が遅い
アレルギー反応が強くなることも
気虚の弁証(診断)
望診(ぼうしん)
顔色の青白さ
気が不足していると、顔色が血色悪く青白くなることがあります。姿勢の崩れ
体力が低下している場合、姿勢が悪く、だるそうに見えることがあります。呼吸の浅さ
気虚の状態では、呼吸が浅く、息切れが起こりやすくなります。発汗の増加
特に軽い運動やストレスでも汗をかきやすくなることがあります。聞診(きんしん)
息切れ
軽い運動や少しの労力で息切れを起こすことが多いです。低い声や無気力な話し方
気が不足していると、声に元気がなく、話し方が弱々しくなることがあります。呼吸が浅く、遅い
呼吸が浅く、スムーズに息を吸い込むことが難しくなります。問診(もんしん)
疲れやすい
特に体を動かした後にすぐに疲れを感じる、休息後も疲労感が取れない。食欲の低下
食事が楽しめず、あまり食欲がない。消化が悪い感じがする。精神的な無気力感
意欲や集中力がなく、気分が沈みがち。運動後の息切れ
少しの運動でも息が切れてしまう。寝汗
寝ている間に汗をかくことが多い。切診(せっしん)
脈が弱い
気虚の場合、脈が弱く、感じ取りにくいことがあります。特に「浮脈」や「緩脈(ゆるい脈)」が現れやすいです。舌の変化
気虚の人は舌がやや白っぽく、舌の色が薄い場合が多いです。舌苔が薄く、乾燥していることもあります。体温が低い
気虚の人は体温が低く、寒がりやすい場合があります。気虚の弁証法に基づく診断の具体的なポイント
全身的な倦怠感や無気力感が顕著で、体力やエネルギーが不足している。 顔色が青白く、冷えを感じやすい。 息切れや呼吸の浅さ、軽い運動でも疲れる。 食欲不振や消化不良、特に食後に疲れを感じやすい。 精神的な疲労や不安感、無気力な状態が続く。 脈が弱く、舌が淡白で苔が薄い。気虚の治療と対処法
気虚の弁証に基づく治療は、体内の「気」を補うことを目的とします。
補気薬の使用
漢方薬(例:人参、黄耆など)を用いて気を補います。鍼灸
気の流れを整え、補うための鍼灸治療。栄養補給
消化に優れた食事を取ることで、気の生成を促します。生活習慣の見直し
ストレスの管理や十分な休息を取ることが重要です。 気虚の対処法規則正しい生活
睡眠や食事の時間を一定に保ち、過度なストレスを避けることが大切です。バランスの取れた食事
気を補う食べ物としては、肉類(特に鶏肉や牛肉)、豆腐、卵、米、野菜などが推奨されます。また、消化に良い食べ物を摂ることが大切です。適度な運動
気功や太極拳など、ゆったりとした動きの運動が気の流れを促進し、体力を養う助けになります。 気虚は、体や精神のエネルギー不足が原因となるため、心身のケアを意識して生活することが予防に繋がります。気虚と臓腑(臓器)
脾(ひ)
脾は、食物の消化と栄養の吸収を担当し、気の生成にも深く関わっています。脾の働きが弱いと、消化吸収能力が低下し、体内で「気」がうまく生成されません。
このため、脾の気虚は気虚の主要な原因の一つとされています。
脾気虚
脾が弱くなることで、消化機能が低下し、気を生成する力が不足します。その結果、全身的に気虚の症状が現れます。
症状は食欲不振、疲れやすい、腹部の膨満感、下痢や便秘など。
肺(はい)
肺は、外界から取り入れた空気を体内に取り込み、体内の気を補充する役割を果たしています。また、肺は気の循環を調整し、体内の気を全身に供給する重要な役割を担っています。
肺の気が不足すると、気虚が現れることがあります。
肺気虚
肺の機能が低下すると、外界の邪気を防ぐ力(免疫力)が弱まり、息切れや呼吸困難を感じることがあります。症状は息切れ、咳、呼吸の浅さ、声がかすれる、汗をかきやすい。
腎(じん)
腎は、「精」や「気」の源とされ、体力やエネルギーを維持する役割を持っています。腎が虚すると、全体的な気虚が現れることがあります。
特に、腎は生理的なエネルギーの蓄積と消耗を調整しており、その弱体化は気虚の進行に影響を与えます。
腎気虚
腎が弱いと、気が補充されず、体力やエネルギーが低下し、気虚を引き起こします。これにより、体が疲れやすく、無力感を感じることがあります。
症状は腰痛や膝のだるさ、耳鳴り、足の冷え、疲労感、性欲の低下など。
心(しん)
心は、気の循環を助け、血液の流れと密接に関連しています。心の気が不足すると、血液の循環がうまくいかなくなり、気虚の症状が現れることがあります。
特に、心の気虚は精神面にも影響を与えます。
心気虚
心の機能が低下すると、気の流れが滞り、精神的に不安定になることがあります。心気虚が進むと、元気がなくなり、精神的な疲労感や不安感が強くなることがあります。
症状は不安感、睡眠不足、動悸、倦怠感など。
肝(かん)
肝は気の流れを調整する役割を持っており、肝気が不足すると、気の巡りが悪くなり、全身的な気虚を引き起こすことがあります。肝の不調は、特に精神的な症状にも影響を与えることが多いです。
肝気虚
肝の機能低下により、気の巡りが悪くなり、体全体にエネルギー不足を感じることがあります。肝気虚による気虚は、特にストレスや感情の不調に関係します。
症状はイライラ、抑うつ、胸部の圧迫感、頭痛、目のかすみなど。
気虚は、以下の臓腑と特に関係があります
脾気虚消化と気の生成に関わる脾が弱ると気虚が生じます。
肺気虚
呼吸と免疫機能を担う肺が弱ると気虚が現れます。
腎気虚
体力やエネルギーの源である腎が虚弱になると気虚になります。
心気虚
血液循環と精神の安定に関わる心が虚弱になると気虚が生じます。
肝気虚
気の巡りを調整する肝が弱ると気の滞りが生じ、気虚の症状が現れることがあります。
これらの臓腑が弱ると、気虚の症状が現れやすくなるため、気虚の治療ではそれぞれの臓腑の調整を行うことが重要です。
気虚の経絡(けいらく)
脾経(ひけい)
脾は「気」を生成する臓器であり、消化と栄養の吸収に関わります。脾経は、体内で「気」を生み出す役割を担っているため、脾気虚の状態では脾経が影響を受け、全身的な気虚の症状が現れることがあります。脾経の関連症状
食欲不振疲れやすい
腹部の膨満感や消化不良
下痢や便秘
倦怠感
肺経(はいけい)
肺は体内で「気」を循環させ、外界から取り込んだ空気を体内に供給します。肺気虚の場合、肺経が関与し、呼吸や免疫に関連する症状が現れることがあります。肺経の関連症状
息切れ呼吸が浅い
咳や風邪をひきやすい
声がかすれる
発汗が多くなる
腎経(じんけい)
腎は「気」の源であり、体内でのエネルギーの蓄積と消耗を調整しています。腎気虚が進行すると、腎経に関連する症状が現れ、特に体力や精力の低下が顕著になります。腎経の関連症状
腰痛や膝のだるさ足元が冷える
疲労感が強い
性欲の低下
耳鳴りや耳の聞こえにくさ
心経(しんけい)
心は「気」の循環を助け、血液の流れとも深く関係しています。心気虚になると、心経に関連した精神的な症状や血行不良が現れることがあります。心経の関連症状
動悸精神的な不安や不眠
倦怠感
記憶力の低下
気分の落ち込み
肝経(かんけい)
肝は気の流れを調整する役割を担っており、肝気が不足すると、気虚の症状が全身に広がることがあります。肝経が弱まることで、特にストレスや精神的な不安が強く影響を与えます。肝経の関連症状
イライラや抑うつ胸部の圧迫感
頭痛や目の疲れ
目がかすむ
胃腸の不調(便秘や腹部膨満感)
気虚の鍼灸治療
気虚に対する鍼灸治療は、体内の「気」を補充し、気の流れを整えることを目的としています。
気虚はエネルギー不足が原因となるため、鍼灸治療ではその不足している「気」を補い、臓腑(特に脾、肺、腎)や経絡に作用して、全身のエネルギーバランスを回復させることが重要です。
気虚に対する鍼灸治療の基本方針
気を補う
体内の気が不足しているため、気を補う経絡やツボを刺激します。特に脾経、肺経、腎経などにアプローチして、気を補充します。気の流れを促進する
気の流れを円滑にし、滞りを解消することが治療の重要な要素です。特に気の巡りを調整する肝経や脾経、肺経にアプローチすることが効果的です。体力回復
気虚は体力や免疫力の低下を伴うため、鍼灸を通じて体力回復を促します。体を温め、元気を取り戻すための治療を行います。気虚で使用する経絡・経穴(ツボ)の例
鍼灸や指圧治療として
脾経のツボ
脾経は「気」を生成する重要な経絡です。脾気虚があると、体の気が不足しやすいため、脾経のツボを刺激することが効果的です。足三里(あしさんり)
脾経に位置し、消化器系や体力の回復を助けるツボです。脾気虚に伴う疲労感を改善します。
三陰交(さんいんこう)
脾経と腎経が交わるポイントで、体全体のエネルギーを補うツボです。
肺経のツボ
肺は気を全身に供給する役割を果たしており、肺気虚の改善には肺経のツボを使用します。中府(ちゅうふ)
肺経に位置し、肺の機能を調整し、呼吸を助けるツボです。肺気虚による息切れや呼吸の浅さに有効です。
列缺(れっけつ)
肺経の重要なツボで、肺機能を改善し、気を補充します。免疫力が低下している場合にも効果があります。
腎経のツボ
腎は気の源とされており、腎気虚は体力や生命力の低下を引き起こします。腎経のツボを使うことで、体力の回復とエネルギーの補充を図ります。腎兪(じんゆ)
腎経に位置し、腎のエネルギーを補う重要なツボです。特に体力の回復に効果的です。
太渓(たいけい)
腎経の代表的なツボで、腎の気を補う作用があります。腎気虚による疲労感や冷えに有効です。
心(包)経のツボ
心は「気」の循環を助ける役割を果たし、心気虚による動悸や不安感を和らげます。神門(しんもん)
心経のツボで、心の不安定を調整し、気の循環を助けます。精神的な疲労感や不安感に有効です。
内関(ないかん)
心包経 のツボで、ストレスや緊張を解消し、心身のリラクゼーションを促進します。
任脈と督脈のツボ
気虚が進行すると、体全体のエネルギーバランスが崩れやすくなります。任脈(特に「気海」)と督脈(特に「百会」)を刺激することで、全身的な気を補い、エネルギーを活性化させます。気海(きかい)
任脈にあるツボで、気を補い、エネルギーを強化する作用があります。特に疲れやすさや体力低下を改善するのに有効です。
百会(ひゃくえ)
頭の頂部に位置するツボで、全身の気の流れを促進し、気虚による無気力感や精神的な疲労感を改善します。
など
※市販の「お灸」をする時の参考としても使用できます。
鍼灸治療の方法
鍼刺激
軽く鍼を刺し、気の流れを促進させます。気虚の場合は、過度に強い刺激は避け、穏やかな刺激で気の補充を目指します。灸治療
艾(もぐさ)を使ったお灸も有効です。特に温めることで体力を補い、気を高める効果があります。腹部や背中、脾経や腎経、肺経にお灸をすることで、気虚の改善が期待できます。まとめ
気虚に対する鍼灸治療では、気を補うツボや、気の巡りを良くするツボを刺激することが中心となります。特に脾経、肺経、腎経など、気の生成や循環に重要な役割を果たす経絡にアプローチすることが効果的です。
また、鍼やお灸を使って体内のエネルギーバランスを整え、全身の気を補充することで、気虚による様々な症状を改善することができます。

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参考文献
中医弁証学
柯雪帆 (著), 兵頭明 (著)
東洋学術出版社
1998/7/1発売
全訳中医診断学
王 憶勤 (著), 浅野 周(訳)
たにぐち書店
2008/2/1発売
関連外部リンク
Network Pharmacology to Uncover the Biological Basis of Spleen Qi Deficiency Syndrome and Herbal Treatment
National Institutes of Health (NIH) (.gov)
Qi stagnation and qi deficiency are associated with depression in college students
National Institutes of Health (NIH) (.gov)
The Role of Qi-Stagnation Constitution and Emotion Regulation in the Association Between Childhood Maltreatment and Depression in Chinese College Students
National Institutes of Health (NIH) (.gov)